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2004年1月号 鍼治療と疾病

昨年11月22/23/24の3日間、北京で開かれた「お血症研究国際学術大会」で、私は、臨床研究の立場から(実際に日本で治療した)、「お血」が原因で、不妊症、月経不順、更に多嚢胞卵巣症候群という難治性の婦人疾患を煩っておられた患者さんに「お血」を取り除くという中医学の治療法で高い効果を上げ、無事出産されたケースを事例に発表してきました。

「お血」というのはちょっと耳慣れない言葉ですが、中医学では、健康のキーポイントともいえる大切な考え方です。正常な血液はサラサラとして、滞りなく全 身を巡り、体のすみずみまで栄養を送り、健康を維持します。しかし、血液の粘度が高くなると、血液の流れが悪くなり、体の所々で、淀みや渋滞を起こす。つ まり「お血」です。「お血」は、中医学で考える“邪”(病気の原因)の一つですが、 血流が悪くなると、栄養の供給と老廃物の排出がうまくいかなくなり、 病気を引き起こします。お血の起こる原因は様々ですが、最近特に多いのは、外的ストレスや内的ストレス、生活習慣の乱れによって起こるタイプ。現代病(肩こりや冷え症、月経痛、花粉症などのアレルギー疾患、動脈硬化症 ・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞など)の多くが血液の問題です。病気には、「お血」が大きく関わっていることから、中国での学会も、テーマを「お血」に、絞りこんで行われたのです。お血症=病気ではありませんが、中医学では、「治未病」の観点(予防医学)から血流を改善する鍼をし、病気に至らないようにします。既に病気の場合も鍼治療で健康を取り戻します。

鍼灸治療は、西洋医学とは違う角度から人体を診る、もう一つの医学なのです。

 

投稿者:tcm-editor

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