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2008年5月号 脳血管疾患と鍼治療

脳血管疾患の中でも六割以上を占める脳梗塞は、脳出血に比べて比較的自覚症状がないまま、ゆっくりと進行することで油断がなりません。特に高血圧や動脈硬化の患者にとっては脅威です。

数年前、某大学病院で「あなたも知らぬ間に脳梗塞」というテーマで二十代後半から八十代前半の約千人に脳のMRI検査を行いました。報告によると「微小なものを含めると約七割の方に脳梗塞が認められる」という非常にショッキングな結果が出ていました。しかし、私が本当に驚いたのは、その中でほとんどが「治療の必要がない」と断言されていたことです。

血流改善脳梗塞が微小で生活に支障がないからといって本当に治療の必要がないと言えるのでしょうか?私が診れば治療の必要ありです。中国医学の医書には「上工(じょうこう)は未病を治す」と記載されています。上工とは、優れた医者という意味で「未病を治すとは」まだ病気に至っていない軽い段階から治療するという意味です。現代医学は未病に対しては無関心で、発症した病気を重視しているのが現状。脳梗塞は微小でも存在することに代わりはなく、たとえ少々でも結構障害があると言うことです。「未病」の状態である今の段階だからこそ予防・治療する必要があるのです。やがて徐々に血行が悪くなり大きな脳梗塞や脳出血、そして認知症へと進行する恐れが多分にあるからです。

中国医学ではまず何よりも血流改善が最も重要と考えます。鍼灸治療は、合谷・三陰交などの経穴に刺激することで赤血球や血小板の凝集性を改善(ドロドロの血液をサラサラに)して血管を拡張します。漢方薬治療では丹参・川キュウ(キュウは草冠に弓)・紅花等を服用します。中国医学の「未病」の段階で治療するという予防治療は、現在、中国の病院で中西統合医療(中国医学と西洋医学を併用して治療する)として、しっかりと実践され、欧米諸国にも評価されています。

投稿者:tcm-editor

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