no image

2009年12月号 下痢・過敏性腸症候群と中国医学

慢性下痢 下痢とは、便量が増加し、便が水様性になり、頻回に排便することを指し、便がゆるくなる症状。下痢になると、しばしばガスを発生、腹部けいれん、便意の切迫、吐き気、嘔吐を伴うことがある。

正常な便は60~90%が水分。下痢は主に水分が90%を超えた状態。便が消化管を速く通過しすぎたり、便中にある物質が、大腸の水分吸収を妨げたり、大腸で水分が異常に分泌されたりすると便に過剰な水分が含まれて下痢になる。ウイルスや細菌感染、寄生虫感染症、服用薬、食事の内容、ストレス、化学物質、腫瘍(しゅよう)、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患などの慢性疾患、といったさまざまな原因により下痢が起こる。

急性の下痢症状に対しては、西洋薬がよく効く。辛いのは慢性下痢症、過敏性腸症候群などで、症状が短期間で改善されにくい。

中国医学では、下痢のことを“泄瀉(せっしゃ)”と呼ぶ。慢性下痢の治療は、漢方薬の下剤で治療する。一見矛盾したような反治法(通常とは反対の治療法)や、利尿作用の強い漢方薬で下痢を改善するといった場合もある。下剤を用いるのは、宿便だけでなく、病原菌、毒素や壊死して脱落した腸粘膜などを一掃し、これにより中毒症状を緩和する。また利尿剤を用いるのは、腸内の過剰な水分を尿として排出させるためである。慢性の下痢症状の場合は、さらに根本的な原因を分析し、3タイプに分けて治療する。

1. 肝気鬱結型:
ストレスや精神緊張は、脾胃(消化器系)に影響し、全身の機能低下をもたらし泄瀉(下痢)が起こる。
2. 脾胃虚弱型:
飲食の不摂生、過労などで、脾胃の機能が衰え、運化作用(食物の消化と吸収、栄養と水液の運搬)が失調し、泄瀉(下痢)が起こる。
3. 腎陽虚型:
加齢などで腎が衰退すると、温煦作用(身体を温める働き)が低下し、腎の気化作用(尿を生成する働き)、脾の運化作用が障害されて泄瀉(下痢)が起こる。

投稿者:tcm-editor

一覧に戻る