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2009年2月号 排尿困難と鍼灸治療

1日の尿量は成人男性でおよそ1,500ml、女性で1,200ml。膀胱には約300ml尿を溜めることができ、1日の尿の回数は普通5、6回。尿は膀胱の筋肉が収縮すると同時に、尿道の拡張が行われて排出される。高齢になるとこの協調機能が低下し、「尿が出にくい」という不快症状が起こる。

尿意はあるのに、腹に力をいれても尿が出にくい場合(遷延性排尿)や、尿が出ても勢いがなく、排尿に時間がかかり、途中で尿が止まりがち等の症状を通過障害による排尿困難という。後者の代表的なものが高齢の男性に特有な前立腺肥大症という。他にも前立腺結石、前立腺がん、尿道狭窄、膀胱頚部硬化症などがある。

排尿困難次に、膀胱を支配する神経に障害がある場合は、膀胱を圧迫しないと尿が出にくくなる。これは神経因性膀胱という。交通事故や脳卒中後遺症、糖尿病、直腸がん、子宮がんの手術後などに罹る。また、何らかの薬物服用の副作用で尿が出にくくなることもある。

薬物療法では、利尿剤、循環改善薬、抗前立腺肥大薬、降圧薬、α-遮断薬、女性ホルモン剤、抗コリン薬などが使われるが改善されにくい場合も多い。

中国医学では、排尿障害を淋証と呼び、排尿困難や、尿が少ないなどの症状の違いによって、一般的には熱淋(排尿痛、灼熱感)・石淋(尿に砂が混じる)・気淋(排尿に力がない)・血淋(血尿)・膏淋(混濁した不透明の尿)の五種に分け治療を進める。それぞれの原因・体質に合わせて、全身の経穴(ツボ)から選穴し、鍼灸治療を行うことで効果を最大限に引き出す。

鍼治療には、輸尿管の痙攣を緩和させる即効性があり、さらに排尿痛などの痛みを止め、輸尿管の蠕動運動を増大させる働きがある。必要に応じて鍼治療の刺激強度を増加することによって、尿の流れる量も増加し、さらに下腹部の血流を改善することで膀胱周囲の筋肉の増強、麻痺した膀胱の神経を回復させ、つらい症状が改善される。

投稿者:tcm-editor

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