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2010年3月号 腱鞘炎の鍼治療

腱鞘炎関節を動かす筋肉の力を四肢の先端に伝える紐状のものを腱と呼び、腱は、腱を固定する腱鞘というトンネルの中を通っている。腱と腱鞘の摩擦で起きた炎症を腱鞘炎といい、正確には狭窄性腱鞘炎と呼ばれる。

腱鞘炎を起こすのは、手や指の酷使(例えば弦楽器奏者、手先の細かい反復作業など)が1番の原因だが、女性ホルモンのエストロゲンという物質の増減によって起こる腱鞘炎も多い。妊娠期や更年期の女性に比較的多くみられる。その他、結核性やリュウマチ性の腱鞘炎もある。

腱鞘炎の種類

  • バネ指:指を伸ばそうとする時に、曲がったまま伸びにくく、曲げようとする時に、なかなか曲げられない。全ての指に発症するが、特に親指、中指、薬指に発症することが多い、痛みは手のひらの指の付け根に現れ、初期は痛みを伴わない時もある。炎症が進行すると痛みが強まり、指を伸ばす時には、弾かれ音がすることもある。
  • 手根管症候群:手根管が手首内側中央にある正中神経を圧迫し、指先のしびれ、冷え、知覚鈍麻、母指の運動障害などが起こる。悪化すると親指の筋萎縮が起こる。
  • ドゥケルバン病:親指を反らすと手首の親指側に疼痛が起こる。タオルを絞ったりすると手首の親指側が強く痛む。

現代医学における腱鞘炎治療は、手術以外では、炎症等を抑える薬の服用、患部にステロイド剤などを注射、低周波電気治療、冷やしたり温めたりする治療などがあるが、慢性化した腱鞘炎は治癒するまでに時間がかかる。

中国医学では、鍼灸治療で2つの角度から治療する。対処療法的に炎症を起こしている腱鞘、周囲の筋肉を中心に治療し、腱鞘の炎症、腫れやむくみを軽減させ回復させる(鍼灸治療によって、局部の血管が拡張し、血流が改善され、増加した免疫細胞が腱鞘の炎症を鎮める)。もう1つは、ホルモンバランスなどを整える根本治療、冷え性体質、虚弱体質などを改善することで、再発しにくい体調へ根源的に治す。

投稿者:tcm-editor

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