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2012年6月号 鍼療法の鎮痛効果

鍼療法の鎮痛効果
米国の「ロチェスター大学」の神経科学者のマイケン・ネダルガード(Maiken Nedergaard MD)氏らが、Nature Neuroscience誌電子版に「鍼療法の鎮痛効果を科学的に説明する新発見」を発表し、話題を呼んでいます。
痛みに対する治療で、世界中で広く利用されている鍼療法は、アデノシンと呼ばれる鎮痛作用をもつ化学物質の分泌を促進することによって痛みを抑えるというものです。

アデノシンは、負傷後などに、神経の痛み信号を抑えて痛みを和らげるために、皮膚の中で活性化する神経調節物質です。

鍼療法は、4千年前から、世界の特定の地域で主な医療の1つとして使われてきましたが、その効果は完全に理解されていないので、懐疑的な人々も多くいます。」とマイケン・ネダルガード氏は語っています。しかし今回の研究では、鍼療法が身体の痛みを軽減するというメカニズムを科学的に証明しました。鍼療法による治療中には、鎮痛作用のあるアデノシンが多く分泌されることと、アデノシンの分泌こそが鍼療法で痛みを減少させる主な要因であることを発見したのです。


さらに鍼療法の治療中と、針治療直後に、鍼を打った周囲の組織のアデノシン濃度が24倍も増加していることも発見しました。
「鍼療法は、体内の多くの異なったメカニズムが働くことで相乗効果が生まれます。今回の研究発表では、新しく、鍼療法効果の要因の1つをアデノシンの分泌であると特定できた。私たちの推奨する代替医療で注目されている鍼療法の複雑な効果過程への理解が、さらに一歩前進することができた。」と、米国の「国立衛生研究所」の国立代替医療センター長のジョセフィン・ブリッジス(Josephine Briggs)氏は語っています。

鍼治療が科学的に実証されることは、鍼灸師にとっても、患者さんにとっても、喜こばしいことです。

投稿者:tcm-editor

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