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2015年4月号 認知症と中国医学

「認知症」は慢性的に進行する精神衰退性の疾病です。初期には、最近の記憶が減退し、性格が変わり、穏やかだった人が自分勝手になったり、頑固になったりする等が特徴です。進行すると知能が全体的に低下し、自分で身の回りの世話ができなくなったり、寝たきりになったりします。

西洋医学では「脳血管性認知症(脳血管障害による血流量の低下)」と「アルツハイマー型認知症(脳の委縮)」に大きく分けられ、主にアルツハイマー50%、脳血管障害10%、両者の併発15%、その他10%となっています。西洋諸国や中国でも本疾患による死亡順位が第4位となっています。しかし、現代医学でも治療の有効な手だてがないのです。「認知症」という病名は中国医学にはないものですが、中国医学でいう「健忘証」「鬱証」「不眠証」「呆証(判断力・思考力の低下)」などに相当する認知障害として捉え、治療・予防対応しています。「認知症」のような疾患の原因は、大きく分けて2つあります。まず、血の流れが滞る「?血」の状態になると、脳への血流を妨げることから、痴呆の症状につながります。また、腎は脳の働きと深い関わりがあるため、腎の精が不足する「腎虚」の状態になると、脳の機能が低下します。

近年、老年性認知症の鍼灸のメカニズム研究が幅広く展開され、鍼治療後では認知症患者の大脳皮質の興奮性が向上し、脳の血液供給と酸素供給量が増加して衰退していたニューロンのエネルギー代謝を促すことが解明されました。また、鍼治療により、脳組織内のM-レセプター結合容量が変化してcAMP/cGMPの比率を調整することから脳組織内のエネルギー代謝を改善し損傷された脳組織の修復と再生を促すことが動物実験でも証明されたのです。

●腎虚タイプ:腎精の不足により、脳髄を養うことができず、脳が萎縮して、認知症になると考えます。

また、アルツハイマー型の認知症の際に見られる脳の空洞は、中国医学の腎精不足状態に類似しており、中国医学ではアルツハイマー型認知症は、このタイプに属すると考えられています。

●?血タイプ:?血は、1、血行が悪い、2、血の質が悪い(コレステロールや中性脂肪が多い)、3、血脈が悪い(動脈硬化)状態のことを指します。中国医学では脳血管障害による認知症は、このタイプに属すると考えられます。中国医学では「?血」や「腎虚」といった原因から考えても、それぞれ活血(血行改善)、補腎(腎精の補充)の方法で予防・対応することが可能です。

投稿者:tcm-editor

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