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2015年8月号 「坐骨神経痛」の鍼灸治療②

坐骨神経痛は、坐骨神経が圧迫されることで起こります。若い人の場合は椎間板ヘルニアが多く、高齢者の場合は、腰部脊柱管狭窄症が多く、中高年の方に多く発症し、お尻や太もも、すね、ふくらはぎ、足にかけて、鋭い痛みやしびれが現れるだけでなく、麻痺や痛みによって歩行障害、ひどい場合は激しい夜間痛などを伴うことがあります。

西洋医学では、ヘルニア部分に対する手術療法以外では、保存療法として、理学療法、薬物療法、さらに痛みのひどい場合には神経ブロック注射での治療を行います。しかし、根本的に痛みを取り除くことは難しく、再発を繰り返す人も多いのです。

鍼灸治療では、鍼灸治療が効くメカニズムの1つに、鍼灸治療の刺激によって体内のベータ・エンドルフィン(モルヒネと似た鎮痛作用のある物質)の分泌が高まり、痛みを抑えることが出来るのです。

さらに、中国針麻酔の治療技術を応用して、鍼を臀部の経穴(ツボ)に刺鍼し、坐骨神経を刺激することで、下肢の筋肉や血管が拡張して血流が改善し、発痛物質が血液とともに流され、痛みを軽減させます。

中国医学では、坐骨神経痛を「痺証(ひしょう)」の一つと考えます。痺とは、「つまって通じない」という意味です。寒邪(かんじゃ:寒さで血管や神経が縮み、血流が悪くなり神経を刺激)、湿邪(しつじゃ:湿気で血流や神経の流れが悪くなり神経を刺激)などの環境因子が、坐骨神経走行部位の臀部から下肢にかけて「血」の流れを妨げた状態を指します。つまって通じない部分が、痛み、痺れ症状となって現れるのです。ですから鍼灸治療は、坐骨神経に対する局所的な治療のみでなく、全身治療として、流れを妨げる原因である寒邪、湿邪を取り除く根源的な治療を合わせて行い、さらに高い治療効果を得ているのです。


投稿者:tcm-editor

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