no image

2016年2月号 動悸と中国医学

動悸とは、心臓病や心臓以外の疾患を診断するうえでも非常に重要な症状の一つです。「普通では自覚されない心臓の拍動やその乱れを自覚すること」をいい、日常診療では、大変よくみられる症状です。不眠症、健忘症、目眩、耳鳴り等の病症と同時に現われることが多いです。

中国医学では、動悸という症状を「心悸」を呼び、心の失調により起こると考えます。「心悸」症状は、心の血液の循環をコントロールする働きに問題があると発症するのです。動悸を大きく以下の4つに分類し、丁寧な問診から総合的に診断し、それぞれの型(タイプ)にあった適切な鍼灸治療を行います。

1,気虚タイプ
このタイプは普段から、驚きやすい、恐れやすいという特徴がある。このため突然驚くと心神不寧(心神を安らかに保てない状態)となり動悸が起る。また心の気が不足することで、心の血液を送り出す力が弱まり、心を上手く滋養できないために動悸を起こすものもある。

2,血虚タイプ
過度の出血や長い重度の病気は、体内の気血を損傷し、血虚に至り動悸を自覚する。または、ささいなことでも悩み過ぎたり、過度に物事を考えることで、心脾(血)を損傷して心を上手く栄養できなくなり、神志が不安になると動悸が起る。

3,痰火タイプ
過食や偏食などの原因により脾を損傷し、湿(体にとって不必要な水分)が停滞すると痰を形成する。この痰湿が長期にわたって体内に停留し、熱を生み、痰火となり、心臓に影響することで、心悸がおこる。

4,瘀血タイプ
長期にわたって関節等の痛み疾患を患っていて、瘀血が心陽を阻滞させると心悸がおこる。またもともと心陽が虚しており、血液の運行に力が無く、そのために心脈に瘀血が阻滞すると心悸がおこる。

考えられる主な病気 病気の概要

○不整脈
心拍動が、標準値(1分間に60~100回程度)を超えて、拍動が多すぎたり、少なすぎたり、心拍動のリズムが乱れる

○狭心症・心筋梗塞
心臓の筋肉に血液を送り込む血管が動脈硬化(動脈内の壁が硬くなった状態)によって、狭くなったり詰まったりして、血流が不足し心臓が酸欠状態になる病気

○低血糖症
血糖値の異常な低下(通常50mg/dl以下)によって引き起きる。

○バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、全身のエネルギー代謝が異常に高まる病気。

○貧血
鉄分の不足などが原因で、酸素と結合して酸素を体のすみずみまで運ぶヘモグロビンが減少し、血液中の濃度が薄くなった状態。

○更年期障害
閉経の前後、約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモンバランスが急激に変化し、心体にさまざまなトラブルを引き起こす

○精神疾患
パニック障害、うつ病、適応障害、心気症などの精神疾患が原因となっている場合がある

現代医学の治療に行き詰まった場合には、もう一つの医学(東洋医学)としての鍼灸治療を試みることも大事です。


投稿者:tcm-editor

一覧に戻る