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2016年10月号 「認知症の鍼灸治療」

認知症

認知症とは、いろいろな原因で脳の働きが悪くなり、脳細胞が萎縮し、さまざまな障害が起こり、日常生活にも支障が出ている状態のことです。脳は人間のほとんどの活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運べなくなります。

日本では65歳以上の人で認知症を発症している人、更に予備軍を含めると、推計3人に1人だと言われています。認知症はいくつかのタイプがあり、主なものとしては、「アルツハイマー型認知症」「脳血管型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」があり、このうち約60%はアルツハイマー型認知症で、約20%は脳血管型認知症と言われています。

認知症に対する鍼灸治療研究では、鍼刺激で大脳皮質や海馬などの脳血流量を増加させることや虚血性神経細胞壊死を抑制すること、さらにはセロトニン等の脳内活性物質に影響を与えると報告されています。さらに記憶中枢である海馬の代謝が鍼通電刺激(後頸部への刺激)で亢進し、良くなるとの報告もあります。認知症は、この海馬の神経細胞が萎縮して起こると考えると、鍼治療は、認知機能の改善、さらには認知症の予防効果が期待できるということでしょう。

最近では、米国フォックスニュース、英国のテレグラフや数誌は、7月の記事で、中国研究チームが認知症の抑制に鍼治療が有効だと明らかにしたことを伝えています。記事では、中国・武漢大学の研究チームは、軽度認知障害の治療で、ニモジピン薬(脳血流を改善する薬)の投与に鍼治療を加えた治療がニモジピン薬単独の治療よりも認知力改善に有効であったことを発表したと伝えています。

また、鍼灸治療では頭部周囲の経穴(ツボ)に対する直接的な刺鍼以外にも、根源的治療として、認知症患者の弱っている内臓を鍼刺激で改善し、脳血流量を増大させ、代謝を更新し、神経再生を促すという治効作用があるというのです。

投稿者:tcm-editor

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