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2017年1月号 「中国(東洋)医学と西洋医学の考え方・診かたの違い」

中国医学では、五臓六腑の五臓をそれぞれ肝・心・脾・肺・腎と呼びますが、これは西洋医学でもほぼ同じ呼び方です。日本に西洋医学が伝わった際に、それまで日本の医学の主流であった、中国医学での五臓の呼び名をそのまま翻訳して使ったからです。しかし、実際には、西洋医学でいうところの肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓とは完全なイコールではありません。同じ人間の身体の臓器なので、同様の働きをなす部分も多いのですが、全く違う働きもあります。その西洋医学とは違う各臓器の働きを診ることが、中国医学の西洋医学とは違う角度から診て治療することができる理由の1つです。

中国医学では、肝・心・脾・肺・腎の五臓の働きに対して、西洋医学とは異なる次のような考え方をします。

【心】 中国医学でいう心は「血脈をつかさどる」機能と、「精神・意識・情緒をつかさどる」2つの機能をもっています。言い換えれば、循環器の機能だけでなく、中枢神経(脳)の機能もふくまれています。この心は西洋医学の心療内科でいう心の意味と同じで、日本語にもなっている “こころ”のことです。

【肝】 肝は、西洋医学と同様の血液やエネルギーの貯蔵の働きのみでなく、精神活動にもかかわっていると診ます。ここに西洋医学との大きな違いがあります。肝の状態や働きが悪くなると、イライラ、怒りっぽい、憂うつ、精神不安定、などの精神症状が起こると考えらており、更年期障害などでも起こりうるこのような症状に対し、肝を改善する漢方薬(加味逍遥散)で、治療されます。

【肺】 肺はその位置と形状から、古代には「五臓六腑の華蓋(帝王の乗る馬車を覆う傘)」と呼ばれていました。一番高い場所に位置し、肺の下には「君主の官」である心や他の臓腑があり、それを覆って保護するような形をしているからです。「呼吸をつかさどる」という肺の機能の診かたは西洋医学と同じですが、中国医学ではさらに肺に“通調水道”という働きがあると診て、浮腫症状に対して効く肺に関連する処方で投薬するのはそのためです。

【脾】 脾に対しての考え方は西洋医学と大きく違います。中国医学では脾は消化と吸収をつかさどり、後天の本(消耗した先天的なエネルギーを日々補う)と呼ばれるほど非常に大切な内臓とされています。解剖したのでなく外側から観察して五臓六腑の位置を描いた初期解剖図では胃の横に実際の脾臓の5-6倍の大きさで描かれていたのです。 西洋医学では、ほとんど重要視されていない臓器で、場合によっては手術で脾臓を丸ごと切除することさえあります。

【腎】 中国医学でいう腎は決して泌尿器の尿代謝機能だけでなく、先天の本(生まれつきの先天的エネルギーを蓄えている)とされています。人間の成長、発育、寿命、生殖、呼吸、骨、脳、毛髪、瞳孔などさまざまな機能にかかわっており、西洋医学でいう内分泌系(ホルモン関係)のすべては腎に関係していると考えています。不妊治療で腎を補う漢方薬をよく使うのはそのためです。

投稿者:tcm-editor

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