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2018年12月号 「ストレスと中医学」

人はストレスによって心身に様々な影響を受ける。

身体の反応には、生体の自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系の反応がある。自律神経系の反応には、例えばストレスによって、胃酸分泌が増加し、胃痛、血圧の上昇や頭痛が引き起こる。免疫系へ影響すると風邪などにかかりやすくなる。

また内分泌ホルモン系へ影響すると女性の生理不順。さらに心理的な反応では、イライラ、怒り、不安、恐怖、抑うつ、気力や集中力の低下などが起こる。

中国医学では、「怒・喜・思・憂・悲・恐・驚」の7つの情緒変化を『七情』とよび、これらの感情が強すぎたり、長期間続いたりすると様々な病気を引き起こすと考える。これは現代医学のストレスに対する考え方とほぼ同じ。ストレスとは、『七情』のバランスが乱れた状態のこと。

『七情』は、それぞれ「心・脾・肺・腎・肝」と深く関わり、強い怒りや悲哀の感情の種類により、症状が現れる部位(五臓)が変わる。五臓の中でも、「心」、「肝」や「脾」は、臓腑と生理機能の関係から、特に精神的なストレスの影響を受けやすいため注意が必要である。その中でも最も受けやすい臓器は「肝」。

「肝」がストレスを受けると、生命エネルギーである「気」がスムーズに身体を流れなくなるのは、「肝」の「気」の流れを調節し、コントロールする働きがうまく機能しなくなるため。人の身体は、「気」の流れが滞ると必ず不調が現れる。「肝」は、現代医学でいう自律神経や血液循環の調整を担う臓器で、不調になると、怒りっぽくなる・胸が重くすっきりしない・上腹部に膨満感・ガスが溜まる・乳房が張るといった症状が起こる。さらにストレスが続くと、気持ちの落ち込みなど、「抑うつ気分」症状、意欲が出ないなど、うつ病の特徴的な精神症状が起こる。また、不眠、疲労感といった身体症状も併発し、日常生活にまで支障が出る。

中国医学では、古くから『七情』がもたらす身体への影響も病の原因と診て、鍼灸治療や、漢方薬で病を防ぐ、未病の治療に当たってきた。


投稿者:tcm-editor

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