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2019年3月号 ギランバレー症候群


ギラン・バレー症候群とは、手足の脱力と痺れが急速に、左右対称に起こる病気で、多発性神経炎と言われる疾患の一つです。この病気は人口10万人当たり年間1~2人が発症すると推定されています。原因は、ウイルス感染や細菌感染などがきっかけとなり、本来は外敵から自分を守るためにある免疫のシステムが異常をきたし、脳からの情報を筋肉組織などに伝える神経組織が、損傷を受けて発症するという説が有力です。

典型的な症状としては、風邪や下痢などの症状があった数日から約2週間後に、急に手足に力が入らなくなり、歩けなくなる、物を持ち上げることができないといった症状が起こります。この場合しびれよりむしろ、四肢の脱力感の方が強く、体を動かす行為そのものが不自由になることが多くあります。そうした症状は数日から一週間ぐらいで進行し、場合によっては、全く動けなくなることもあります。その他にも顔面の筋肉に力が入らない(顔面神経麻痺)、目を動かせなくなって物が二重に見える(外眼筋麻痺)、食事がうまく飲み込めない、ろれつが回らない(球麻痺)などの症状が出る場合もあります。重症例では呼吸をするための筋肉が麻痺し、人工呼吸器の装着が必要になります。

西洋医学の治療では、免疫グロブリン静注療法、血漿交換療法、血栓溶解療法などで改善し、比較的に予後の良い病気ですが、中には重症例もあり、後遺症を残す場合もあります。
  中国医学(東洋医学)では、ギラン・バレー症候群は「痿証」の範疇にあたり、湿熱邪が経絡に侵襲し筋脈を弛緩させると考え、古くから鍼灸や、漢方薬などで治療してきた歴史があります。  また、1970年代頃から中国で初夏に流行する急性麻痺性疾患(当初 Chinese paralytic syndrome呼ばれていた)を中国医学と西洋医学とを併用して治療してきたという記録が残されていますが、この疾患も現在ではギラン・バレー症候群に含まれると考えられています。

 現在、中国の病院では、統合治療として西洋医学治療と中国医学治療を並行して行い、鍼灸治療では、主に運動神経機能の低下で起こる筋力低下(後遺症)の治療や予防、さらに自己免疫機能正常化のために漢方薬での体質改善治療などを行い、免疫機能を改善し再発予防に成果を上げています。

投稿者:tcm-editor

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