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2019年11月号『虚血性心疾患の鍼治療』

“虚血性心疾患の鍼治療効果が証明された”

虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)が動くために必要な酸素や栄養を送る冠動脈に動脈硬化が進んだ結果、血液の流れが悪くなり、心臓に必要な酸素が十分に供給されず、心筋の一部が酸素不足(虚血)になる病気です。

大きく分けて、安定狭心症(労作性狭心症・冠縮性狭心症)、急性冠症候群(不安定狭心症・急性心筋梗塞)があります。急性冠症候群は、虚血により数日~数週間のうちに事態が急変する可能性のある重症ですが、安定狭心症はすぐに心筋梗塞への移行の少ない狭心症であり、長期間にわたり慢性的に経過します。

「中国成都大学による研究で、慢性の安定狭心症に対する鍼治療の影響についてランダム化比較試験(RCT)を行った結果、安定狭心症患者に対し西洋医学薬物療法に鍼治療を併用すると症状が軽減する」という記事が日経メディカルに掲載され (2019.8.19)、アメリカの医師会の医学誌JAMA Intern Med電子版にも掲載されました。

中国では、慢性安定狭心症患者に対して、漢方薬と鍼治療を併用し治療します。鍼治療や漢方薬治療の高い効果が既に認められており、保険も適用されています。

今回のランダム化比較試験では、この有効性が西洋医学にも認められたのです。その研究では、慢性の安定狭心症の患者に対して、通常の治療である薬物療法と合わせて、鍼治療を併用したグループと、鍼治療を併用しなかったグループを比較した結果、鍼治療を併用したグループの患者が、一時的な心筋の痙攣発作の頻度が低下し、狭心症から起こる胸や背部の痛みが軽減することが示されました。

鍼治療が循環器系や自律神経系に与える影響の仕組みは、ハッキリとは解明はされていませんが、何らかの影響を与え、治療効果があることは証明されました。

鍼灸治療は、西洋医学とは、違った角度から人体を診る、もう一つの医学なのです。

投稿者:tcm-editor

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