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2020年10月号 『膠原病』

膠原病(こうげんびょう)とは、真皮・靱帯・腱・骨・軟骨などを構成する蛋白質である膠原(=コラーゲン)が全身的に障害・炎症を生じる様々な疾患の総称であり女性に多い病気である。全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が見られ、原因不明の発熱や湿疹、関節の痛みなどの症状が共通してみられる。SLE(全身エリテマトーデス)やリウマチなど数種類の病気も含まれている。  西洋医学の治療では、異常な免疫反応を抑える免疫抑制療法が基本となる。強力な抗炎作用と異常な免疫作用を抑える働きを持つ副腎皮質ホルモン薬(ステロイド剤)を用いた薬物療法が用いられるが、副作用などの問題も多い。

中国では、症状が強く出ている場合は、日本と同じく免疫抑制薬のステロイドを使用するが、ステロイドの副作用が強く出る場合や、シェーグレン症候群の乾燥症状や強皮症のレイノー症状など、ステロイドが使いにくい場合、さらにステロイドが有効で炎症マーカーや局所の所見が改善しているにもかかわらず、疼痛などの自覚的症状が改善しない場合には、積極的に中医学治療(鍼灸治療、漢方薬治療)が用いられている。

特に副作用が強く出る場合には、ステロイドを休止、減薬し、免疫を調整する作用のある漢方薬治療や鍼灸治療を併用することができる。また、ステロイドで症状が安定している場合にも、徐々にステロイドの使用量を減らし漢方薬や鍼灸治療中心に移行する。鍼灸治療は患部への直接的な治療で関節等の痛みや炎症を抑えるのに非常に優れている。このように膠原病の多くの症状に対して中医学は補完的役割を果たしている。  このように、西洋医学だけでなく、中医学(漢方薬治療、鍼灸治療)と統合して治療することで、相乗効果で症状が改善し、QOL(生活の質)を高めることが可能。しかし残念ながら日本の医療現場では、まだまだ漢方薬治療、鍼灸治療との統合医療は行われていない。

中医学は、西洋医学とは違った角度から診て治療するもう一つの医学である。日本の医学界に、その認識がないのは残念なことである。

投稿者:tcm-editor

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