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2020年5月号『新型コロナウイルスに対する中国の統合医療の効果』

『中国における新型コロナウイルス肺炎診療処方の中医治療ガイドライン』

新型コロナウイルス肺炎は中医学の「疫」の病の範疇に属し,病因は「疫戻」の気を感受することである。(疫戻:疫癘(えきれい)感染力の強い伝染性の病気)。

各地では病状,気候の特徴,患者の体質の違いにより以下のガイドラインを参考に弁証論治を行うことができる。(弁証論治:病因や経過を具体的に分析することで、論理的に体質を明らかにしてそれに応じて治療方法を選択する考え方)

中国薬典記載用量を超えるものについては,医師の指導下で使用するものとする。

「医学観察期」

臨床症状1:胃腸の不調を伴う倦怠感
推奨される中成薬(漢方薬製剤):藿香正気カプセル(丸剤,水剤,内服液)

臨床症状2:発熱を伴う倦怠感
推奨される中成薬:金花清感顆粒,連花清瘟カプセル(顆粒),疏風解毒カプセル(顆粒)その他に、「臨床治療期」を軽症、中等症、重症、重篤、回復期とそれぞれに症状に合わせて、推奨される中薬や中成薬が記載されている。

私の留学していた北京中医薬大学副校長王偉教授が、「中医薬(漢方薬)は重症化を阻止し、重症患者の病状を緩和させ、治癒率を高め、死亡率を低減させることができる」と報告した。また、上海では「病例の約93%の感染者が中医薬を服用しており、治癒率は約97.5%だった」との報告もある。

ただしこれらは、中医薬と西洋の治療法による中西結合(統合医療)がもたらした結果である。新型コロナウイルス治療でも中医薬と西洋の医薬を相互に補充させる統合医療の重要性が証明された。

中国以外では、韓国、台湾でも中医薬併用ガイドラインがあり、新型コロナウイルス治療に応用されているが、残念ながら日本では併用されていない。

特にガイドラインにある医学観察期、つまり初期段階で中医薬による予防・治療を実行し、高い成果を上げている。

その処方の1つである連花清瘟カプセルの処方内容は、連翹・金銀花・炙麻黄・炒苦杏仁・石膏・板藍根・錦馬貫衆・魚腥草・広藿香・大黄・紅景天・薄荷脳・甘草。

過去にSARS治療でも効力を発揮した処方で、発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛などの症状を改善する。

(↓写真)

連花清瘟カプセル

連花清瘟カプセルには、チベット高原に生育する紅景天も含まれており、紅景天には免疫力を高める作用があるため予防効果も期待できる。

日本では漢方薬による予防投与等は全く行われていないが中国では、高齢者や糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等),透析患者、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている患者が新型コロナウイルス感染予防のために服用しているケースも多い。

投稿者:tcm-editor

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