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2021年01月号『更年期障害の不眠』

女性の「更年期」とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間のことを指す。「閉経」とは、卵巣の活動性が次第に消失し、ついに月経が永久に停止(月経が来ない状態が12か月以上続いた時)した状態。日本人の平均閉経年齢は約50歳だが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎える。

この時期に卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少する。結果としてホルモンのバランスが崩れ、心身にさまざまな不調が表れる。  更年期の症状は、ホットフラッシュと呼ばれるほてりやのぼせなどの症状を含む自律神経(血管運動神経)系の症状が一般的であるが、肩こり、腰痛などの運動器系の症状、不安感、イライラ感、うつなどの精神神経症状など多岐にわたる。特に、更年期の不眠症は、生活の質を著しく損ない、更年期中の有病率は35〜50%と多い。

更年期の不眠症は、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒を特徴とし、閉経期の女性ではその症状はより重症で長期間に及ぶ。病院での治療法は、催眠鎮静薬や、ホルモン補充療法であるが、改善しにくいケースが多い。さらに他の基礎疾患を抱え薬物療法に消極的な患者も多い。

 

2012年、英国のコクランセンターの研究発表では、薬物治療の補助として鍼治療を使用した場合、不眠症に対して臨床的に有効だという結果を出している。2020年12月、さらに、更年期の不眠症に対する鍼治療効果が、上海中医医院の李教授らによって発表された。李教授らは、鍼治療が交感神経中枢である延髄吻側腹外側野の酸化ストレスを軽減し、交感神経興奮性を調節するのではないかと考察している。

さらに更年期の不眠症の場合、鍼治療によって、エストラジオール、卵胞刺激ホルモン、および性ホルモンを安定させる黄体形成ホルモンの量が改善されると報告、鍼治療の有効性を明らかにしている。

 

投稿者:tcm-editor

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