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2021年05月号『片麻痺(脳梗塞・脳出血)の鍼灸治療』

 片麻痺(へんまひ・かたまひ)とは、身体の左右どちらかに上下肢の運動麻痺症状が起こることで、半身不随になっている状態です。
 左右の脳は、それぞれの脳と反対側の体の動きをコントロールしているため、右脳に損傷があれば左麻痺、左脳に損傷があれば右麻痺を発症します。また、左麻痺と右麻痺の症状はそれぞれ特有の症状があります。

〇左麻痺の場合

右脳には身体や空間を認識する、体の傾きや周りの状況を把握する、感情をコントロールなどの役割が、本来の機能をせず、失認(しつにん)や性格変容といった症状が現れます。

〇右麻痺の場合

左脳には運動・行為をコントロールし、理論的に行動する、言葉を司るなどの役割が、本来の機能をせず、失行(しっこう)や失語症といった症状が現れます。

血管が詰まって血液がうまく流れなくなる脳梗塞、血管が破れて出血する脳出血や、くも膜下出血などによって、脳の大脳皮質及び内包や脳幹部の神経細胞に障害が起きると片麻痺の症状が現れます。

片麻痺の原因疾患も脳内出血、脳腫瘍、脊髄腫瘍など様々あるが、原因の多くは脳卒中によるものです。治療では、脳梗塞の症状増悪や再発を予防する「抗血栓薬」、神経細胞を保護し、傷むのを遅らせる「脳保護薬」、頭の浮腫を改善させる「抗脳浮腫薬」、を用いるが、麻痺症状が改善されない場合は、リハビリが行われます。

脳梗塞、脳出血の後遺症に対する鍼灸治療は、中国の大学病院では90%の患者が日常生活の改善目的にリハビリの運動療法と並行して取り入れられています。

中枢性顔面麻痺には、面部(太陽穴・四白穴・地倉穴・頬車穴)、上肢麻痺には上肢(合谷穴・外関穴・曲池穴・肩前穴)、下肢麻痺には、下肢(崑崙穴・陽陵泉穴・風市穴・環跳穴)などをベースに、それぞれ7~8カ所の経穴(ツボ)に刺鍼し、さらに鍼にパルスを通電し、筋肉の収縮弛緩を繰り返させ、麻痺している筋力の低下を予防し、筋力をも回復させます。また、失語症には、舌下部(金津、玉液穴)に、失認や失行、性格変容には、頭部(上星穴・百会穴・風池穴・天柱穴)などの経穴に刺鍼し、全身治療と合わせて治療します。

投稿者:tcm-editor

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