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2021年08月号『橈骨神経麻痺の鍼灸治療』

 橈骨神経が傷害されることで、伸筋群が麻痺し、指を伸ばしたり、手首を反らしたりすることができなくなり、下垂手(drop hand)という変形を生じます。また、傷害する位置によっては知覚異常(しびれ)も伴います。範囲は手の甲側の親指と人指し指の付け根を延長してできる三角形の小さな部分だけなのが特徴で、手のひら側は正常です。
 原因は、骨折や圧迫・挫傷が主です。腕枕をして寝た相手の頭による圧迫「ハネムーン麻痺、土曜の夜の麻痺(Saturday Night Palsy)」が原因で起こることも有名ですが、実際には橈骨神経は上腕の外側を走行しており、腕枕によって損傷し、引き起こるケースはあまり多くなく、硬い床や椅子の肘掛けなどで圧迫されて起こることの方が多いです。また、腕枕をした記憶がないのに朝起きたら麻痺していたということもありますが、大半は、飲酒の後、何かに寄りかかって眠ってしまい、上腕外側を圧迫したケースが多いです。
 病院での治療では、メチルコバラミン(ビタミンB12)や副腎皮質ステロイド薬などを服用します。また、リハビリテーションや、装具を使用することもあります。予後はおおむね良好、数ヵ月で回復しますが、長期にわたり症状の回復が見込めない時は、手術が必要となる場合もあります。橈骨神経麻痺は、痛み等はないものの、患者の日常生活に大きく支障をきたすので、少しでも早く回復することが望まれます。

 鍼灸治療では、患側上肢全体の血流改善治療と、さらに患部に刺鍼した鍼の先端にEMS(Electrical Muscle Stimulation神経筋電気刺激)治療器の端子を装着し、麻痺を起こしている上肢の伸筋群等に電気刺激治療を行うことで、回復を早め、麻痺による筋力低下を最小限にすることができます。鍼灸治療は、現代医学(西洋医学)とは異なる視点で診て判断し、治療するもう一つの医学です。

投稿者:tcm-editor

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