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2022年04月号『網膜色素変性症の鍼灸治療』

網膜色素変性症とは? 網膜に異常な色素沈着が生じる一連の眼科疾患で、網膜が壊れていくに従い、暗いところでものが見えにくい夜盲(やもう)や、視野が狭くなる視野狭窄、視力低下が見られる遺伝性の病気(遺伝性による発病例が多いのですが、遺伝ではなく突然発病する場合もあります)です。
日本では人口3,000~8,000人に1人の割合で発病しています。発症の時期や症状、 進行は様々で、幼少期に発症して40代頃に視力を失ってしまう重症な例もあれば、発症の年齢が高い場合や、進行が遅い場合では、症状の進行はゆるやかで高齢になってもある程度の視力を維持できている場合もあります。

現在、iPS細胞による網膜再生治療や人工網膜などの研究、遺伝子治療など様々な研究が行われ、臨床応用へと進む可能性が高くなっていますが、残念ながら現在は根本的な治療法はまだありません。網膜色素変性症の西洋医学の治療は、病気の進行を遅らせることを目的に、暗順応改善薬やビタミンA、E剤、網膜循環改善薬、 血管拡張薬などの薬が処方されます。

中国医学では、網膜色素変性症は「高風内障、高風雀目」という病名に相当し、古典医学書<諸病源候論・巻二十八>等にも記載があり、昔から治療してきた記録が残っています。
現代中国では、1970年代から既に鍼灸による網膜色素変性症の治療が病院で取り入れられ、現在まで続いています。
鍼灸治療では、網膜循環改善薬、血管拡張薬等で血管を広げ血流を改善させる西洋医学と同様に、眼球やその周囲への血流の改善をします。直接的に眼球周囲に刺鍼する鍼治療の方が、薬の服用より、血流の改善効果が非常に高いので、中国では網膜色素変性症の治療には、ほとんどのケースで鍼治療を併用しています。

投稿者:tcm-editor

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